どうなる?久留米・欠陥マンション裁判(2)~専門家インタビュー – NET-IB NEWS

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 福岡県久留米市の分譲マンション「新生マンション花畑西」の構造・施工の欠陥を巡り、設計事務所と施工業者(鹿島建設)に損害賠償を求めた裁判は、まもなく、結審を迎える見込みである。この裁判の原告区分所有者側の技術支援に関わっている建築構造の専門家・仲盛昭二氏に、緊急電話取材を行った。

(聞き手:伊藤 鉄三郎)

 ――外部階段と建物本体を繋ぐ梁を施工しなかったということは、現実には、非常に危険なことなのですか?

 仲盛 わかりやすい例として、東日本大震災により立体駐車場のスロープが落下して2名が死亡、6名が重軽傷を負った「コストコ多摩境店」の事例があります。この事例は、設計変更により、スロープと建物本体の接続部分が不十分な構造となっていたため、地震による揺れで、接続部分が壊れ、スロープが落下し、下敷きになるなどして、2人の尊い命が奪われたものです。この時の地震では、周囲の建物には地震による被害がなかったことから、コストコの事故に人為的な原因があったことは明らかです、
 この事例では、設計事務所の建築士の刑事事件に関しては、1審で有罪となったものの2審で逆転無罪となり、報道でも取り上げられており、ご存知の方も多いと思います。現在、保険金を支払った保険会社が、設計事務所やゼネコンを相手取り、民事訴訟を争っています。
「新生マンション花畑西」の外部階段を接続する梁が施工されていなかったことは、まさに、コストコの事例と重なりますが、階数や前面道路との位置関係を見ると、このマンションの方が、より深刻な事態であると言えます。

コストコ多摩境店の事故(日経アーキテクチュア 2017.10.12号より)

 ――「新生マンション花畑西」で問題とされている「鉄筋のかぶり厚さ不足」は、建物の安全性に、どのような影響を与えるのですか?

 仲盛 鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、建築基準法施行令という法令に定めてあり、所定のかぶり厚さが確保されていなければ、「法令違反」の状態であると言えます。
 鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さを規定している目的は、(1)鉄筋の腐食を防止する耐久性能上の目的、(2)火災時に鉄筋が熱の影響を受け性能が低下することを防止する耐火上の目的、(3)鉄筋とコンクリートの付着力が確保できなければ鉄筋が抜け出るので、これを防止する構造上の目的などです。
 腐食防止だけであれば、化学的な処置方法も考えられますが、耐火の面や、付着力に関しては、物理的にかぶり厚さが確保されていなければなりません。かぶり厚不足が、建物のごく一部であれば実際上の問題は少ないかもしれませんが、このマンションでは、建物全体において、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚が不足している実態が、鹿島建設自らの調査により明らかになっています。

 ――鹿島建設の施工ミスが、非常に重大なミスであることがよくわかりました。この裁判の結果により、鹿島建設が行政処分を受けるような影響は考えられるのでしょうか?

 仲盛 鹿島建設の施工の瑕疵は、建設業法に違反している可能性が高いと思われます。この事件は、世間にも注目された事件であり、原告が、国交省に告発をすることも考えらます。国土交通省は、この問題を放置することは、絶対にできないと思います。

 ――鹿島建設が行政処分を受けた場合、どのような影響が考えられますか?

 仲盛 建設業法では、建設業者の請負工事における不誠実な行為に対し、必要な指示や1年以内の営業停止を命じることができると規定されています。仮に、鹿島建設が、全国での営業(工事も設計も受注活動も)が、数カ月でも停止すれば、全国で進行中の工事が止まるだけでなく、公共工事では、別の業者に発注をやり直さなければならなくなり、発注者に、時間と費用の面で多大な損失をもたらします。鹿島建設の企業規模が大きいだけに、企業の存続を左右するほどの影響があると思います。
 最近、法律事務所のアディーレが2カ月間の業務停止処分を受けました。アディーレは全国に85の支店があり、約180人の弁護士が所属しています。業務停止となったので、依頼者との契約を解除し、預り金などを返却しなければならず、全国で大きな混乱が生じることが容易に想像できます。鹿島建設の場合、建設工事が主な業務なので、その混乱は、法律事務所の比ではないと思います。

 ――仮に、鹿島建設が行政処分を受けたとした場合、行政不服審査や執行停止の仮処分を申し立てるのではないでしょうか?

 仲盛 鹿島建設が、行政不服審査や執行停止の仮処分を申し立てたとしても、決定までに時間が掛かる上、根拠に基づいて行政処分が行われているのであれば、簡単に処分が撤回されるものでもありません。その間、「行政処分を受けた」という事実は継続し、営業は停止したままであり、また、マスコミに報道されることも避けられません。

(つづく)
【聞き手・文:伊藤 鉄三郎】





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