ロボアド運用、仕組みと実力は? 「テオ」を分析|マネー研究所|NIKKEI … – 日本経済新聞

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 簡単な質問に答えるだけで資産配分の助言やお任せ運用をしてくれるロボットアドバイザー。国内外で急速に普及し始めているが、具体的な中身はあまり知られていない。2016年2月に本格運用を開始した「お金のデザイン」(東京・港)のロボアド「THEO(テオ)」を例に、診断の仕組みやリスク、運用状況などを探った。

■「成長」「インフレ対応」など複数の目的を組み合わせて配分

 ロボアドには(1)資産配分を助言するだけ(2)助言に基づいて運用までを一任――の2種類ある。テオは後者だ。海外の数多くの上場投資信託(ETF)を使って最低10万円から国際分散投資ができ、コスト(投資一任報酬)は預かり資産の1%だ。その他の売買手数料や為替手数料などはかからない。ちなみにテオとは画家ゴッホを経済的に助け続けた弟の名前。顧客の運用を助け続けたいという意味がある。

 ロボアドの多くは質問に対する回答から顧客が背負えるリスク(値動きのブレ)を診断し、その範囲でなるべく高いリターンを上げられる資産配分を提案するというシンプルなもの。しかしテオでは5つの質問をもとにAHP(階層分析法)という手法を使い、顧客ごとに、資産の成長性や値動きのブレ(リスク)の大きさ、インフレヘッジの必要性など資産運用の様々な目的のうちどれがどれだけ重要なのかを推計する。

 それを(1)国内外の株式を中心とする値上がり重視の「グロース・ポートフォリオ」(2)配当・利息重視で主に海外の国債や社債で運用する「インカム・ポートフォリオ」(3)インフレ対策で金や農作物、不動産投資信託(REIT)などで運用する「インフレヘッジ・ポートフォリオ」の3つの機能別のポートフォリオの構成比に変換する。

 3つの機能別ポートフォリオごとに運用開始後の値動きを示した(グラフA)。昨年秋の米トランプ大統領の当選後の金利上昇で債券中心のインカム・ポートフォリオが下落する一方で、株式中心のグロース・ポートフォリオが大きく上昇する逆相関の動きとなっている。

グラフA

 最高執行責任者(COO)の北沢直氏は「値動きが異なるものに分散投資する効果が表れている」と話す。

 5つの質問に答えて、実際に無料運用診断をやってみよう。今回は試しに(1)年齢→「55歳」(2)資産運用の経験→「豊富」(3)元本の安全性を重視するか→「ある程度重視」(4)値下がりしたらどうするか→「値上がりを期待し買い増す」(5)インフレで資産目減りが心配→「ある程度する」――と回答してみた。すると「値上がり益重視派」と診断された(図B)。

図B

 機能別ポートフォリオではグロース42%、インカム41%、インフレ17%となり(図B)、具体的な運用対象は先進国株40%、先進国国債22%、ハイイールド債券22%などと出た(図C)。実際には海外ETFの中から最適なものを最大30数種類選んで運用される。金融危機後にこの運用を続けていた場合、10万円が15万8000円に、年率4.9%で増えてきたという実績のグラフも示された。

図C

 他社のロボアドには全部でも5~6種類の配分しか提示されないものがあるが、テオではこうした配分例が質問への回答次第で231種類でき、その中で最適なものが提示される。

■同じリスクで高いリターンの実績

グラフD

 テオのコストは年1%。世界的な成長鈍化を背景に投資の期待リターンも下がる中、最近は世界全体の株式に投資できるインデックス(指数連動)型投信なら年に0.2%程度、海外のETFなら0.1%台のコストも珍しくない。お任せだからといって、コスト1%に見合う利点はあるのだろうか。

 グラフDは昨年2月からのテオの資産配分231通りに基づいて運用した実績と、他社のロボアドの5つの資産配分の結果だ(円ベース、コスト控除前。他社のロボアドもコストは同じ1%近辺)。

 目を引くのは同じリスクの場合に、テオの方が高いリターンを達成できていること。例えば右端のリスク18%前後の配分例だと、他社のロボアドのリターンが19%なのに対し、テオは24%程度(いずれも年率換算)。

 この差は何か。比較対象の他社のロボアドは7つ程度の少ないETFの組み合わせでポートフォリオを構成するので、リスク・リターンは国内外の株や債券などのそれぞれの指数自体の動きがおおむね反映される。

 「テオの場合は最大30強のETFを組み合わせることで、指数そのものより効率的な運用を目指すスマートベータ(賢い指数)型の運用をしている。特にグロースでは最小分散投資というスマートベータの手法に基づき、より小さなリスクでより大きなリターンを実現できた」(北沢COO)。

 今回は運用開始後まだ1年程度の実績だが、同様に同じリスクで相対的に高いリターンを継続できれば、コストにこだわる投資家にも一定の納得感が得られるかもしれない。

 時間の経過とともに資産の値動きの違いで配分比率が崩れた際に元に戻す「リバランス」については、年に1~2回というロボアドもある中、テオは毎月行う。

 リバランスの頻度が多いほどリスク・リターンが向上するとは限らないとの議論やデータもある。ただテオの場合は、きめ細やかに実施することでスマートベータ型運用をより精緻に行えていることが、相対的に高いリターンにつながっている面もありそうだ。

 北沢COOは「グラフDは投資一任報酬控除前の数値だが、もちろん投資一任報酬を含めたコストも重要。ただ、自分でこれだけ多くのETFを組み合わせる運用をすると1%ではできないことも知ってほしい。テオでは実際の売買でもアルゴリズムの手法でETFを効率的に売買するなどコスト最小化に取り組んでいる」と話す。

■短期では為替が大きく影響も

 良いことばかりではない。グラフDの横軸を見ると231のポートフォリオのうち左端の部分リスクが最小のところでも10%を超えている。顧客のお金をドルに交換して海外のETFを買って運用していることに伴う、為替リスクが大きな要因だ。

 運用対象がドル建てでも最終的な投資対象(原資産)が日本の株や債券であれば、円ベースでは為替リスクは相殺される。ただテオの場合、日本の資産はグロースで日本株が10%、インカムでは1%程度など、原資産は大半が海外資産だ。このため短期的には為替の動きが資産にそれなりに大きな影響を与える。国内金融機関の国際分散投資の商品では、例えば国内債券を中心にすればリスクを1桁台半ばに抑える資産配分も選べるが、テオでは選択できないということだ。

 しかし、例えば年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の14年秋以降の新規ポートフォリオ(内外株が5割)も想定リスクは約12%。少なくともこれくらいのリスクをとらなければ長期でリターンを積み増していくのは難しい、ともいえる。

 そもそも長期では国ごとの金利差は為替変動で相殺されるなど、為替は長い目で見ればリターンにそれほど影響しないというのが金融のセオリーだ。長期運用の場合、為替変動による短期的な資産の値動きは気にしすぎない方がいいかもしれない。

 ちなみにグラフDの右端の方にいくほどグロース・ポートフォリオの比率が高まり、リスク・リターンともに数値が大きくなる。ただ最右端でもリスクは18%。日本株単独でもリスクは一般に2割強とされているので、海外資産主体で為替リスクを受けるとはいえ、それほど大きな数値ではない。

■さらなるコスト削減に期待

 ロボアドについては「中身がブラックボックス」という指摘も国内外で聞かれる中で、アルゴリズムや運用状況についての積極的な開示を求める声が増えている。

 今回の取材で使ったグラフA、Dはお金のデザインが3月にメディアに対して行った運用状況の説明会の際に発表されたもの。説明会でテオの運用がかなり精緻に行われていることがわかっただけでなく、前向きな開示姿勢について多くのメディアなどから好意的な評価が聞かれた。

 コストは現状で最小限に抑えているとはいえ、今後さらなる低減を期待したい。米国では巨大投信会社バンガードがロボアドと、対面でのファイナンシャルプランナーの助言を組み合わせたサービスを年0.3%で実施するなど、低コスト化がいっそう加速している。現時点ではできない積み立て投資のシステムなどの実現も期待されている。

(編集委員 田村正之)

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