国が中古住宅市場を重視し始めている理由

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最近、住宅に関するニュースの中で、ストック(中古、あるいは既存)住宅に関するものが増えてきました。それは国の住宅政策が、新築住宅からストック住宅を重視する方向、つまりストック住宅を現在より流通量を増やし、私たちが購入しやすい環境にしようといていることが影響していると考えられます。ところで、ではなぜ今、ストック住宅なのでしょうか。今回の記事ではその背景を解説するとともに、国などがどのような対応をしようとしているのかにも触れたいと思います。

社会の成熟化への対応と子育て世代の支援を目的に

今なぜストック住宅なのか。その結論を先に書くと、大きく以下の二つの理由があると考えられます。

(1)社会の成熟化に対応するため

(2)子育て世代の住宅取得を容易にするため

まず(1)について。ご存じのように我が国は少子高齢化の時代。そのため、すでに人口や世帯数が減少期に入り、量的には住宅はすでに供給過多となっています。ですから、空き家が増えている状況です。

図表

 

総務省がまとめた平成25年(2013年)度住宅・土地統計調査【図参照】によると、空き家数は820万戸にのぼり、5年前との比較で63万戸(8.3%)増加しています。空き家率(総住宅数に占める割合)も13.5%と0.4ポイント上昇して過去最高となっています。

ですので、国は空き家を含めたストック住宅を従来以上に活用することで、効率良く住宅整備を行う姿勢になったのです。高齢化に伴い医療や介護などの財政負担が拡大していますから、住宅整備は今ある住宅を有効活用したいわけです。

いちから建築する新築住宅より、ストック住宅をリフォームして性能を高めることに補助金を使う方が財政負担は少ないからです。ストック住宅は、善し悪しは別として構造体があるので、仮に何らかの補強が必要であっても、少なくともその分は安価になりますから。

次に(2)について。子育て世代は主に20~30歳代を指します。その期間は多くの人々にとって所得が比較的少ない期間であり、かつ子育てのための費用もかかるため、住宅取得にまでお金が回りづらいのが一般的です。

一昔前、例えばその親世代までは何とかなっていました。まだ、雇用や所得の環境が安定していましたから。しかし、今の子育て世代はそんな環境にはありません。共働き世帯が増えているわけですが、それは金銭以前にライフスタイルとして大変な負担です。

住宅の取得にはそもそも、パラドックス(矛盾)ともいうべき問題点が存在します。それは、ニーズと供給のミスマッチともいえます。要は、最も住宅を熱望する子育て世代が、住宅取得をするにあたって大変難しい環境にならざるをえないということです。

ストック住宅のメリットとデメリット

そうした子育て世代の事情を考慮し、少しでも改善する存在として期待されているのがストック住宅なのです。ちなみに、ストック住宅には新築住宅より値頃感があるほかに主に以下のようなメリットがあります。

・現物があるため暮らしをイメージしやすい
・立地環境に恵まれている

ニュータウン

ニュータウンは現在、居住者の高齢化と人口流出による空き家増加の問題点を抱えているが、既に学校や公園などのインフラが既に整っているのが魅力だ。そのため、そこにあるストック住宅の円滑な継承が行われるようになれば、子育て世代にとっては魅力的な住環境を比較的安価に得られることになる(写真はイメージ。クリックすると拡大します)

「立地環境に恵まれている」は、ピンとこない方もいらっしゃるかもしれませんので少し説明しておきます。「ニュータウン」と呼ばれる場所、代表的なものとして関東なら多摩ニュータウン、関西なら千里ニュータウンをイメージしてください。

これらは今の子育て世代の親世代が、子育て期に住まいを求めた場所です。1区画ごとの敷地面積が広い上、緑が豊富で公園などの施設も充実しているため、子どもを育てるのには良好な環境です。学校などのインフラも既に整備されているのも特徴です。

しかし、高齢化が進んでいるため空き家が増えているのが現状です。その空き家、あるいは空き家になりそうな住宅が、今子育て期にある人たちにとって手に入れられやすいようになれば、より良いのではないでしょうか。

ストック住宅には逆にデメリットもあります。主に以下となります。

・建物の不具合の内容が見えづらい

・内外観や設備が好まれづらい

(見た目が古くさい、現在のライフスタイルに合わない)

つまり、これらのメリットをより強化し、デメリットについても改善することがストック住宅には求められているということになります。そこで、国も改善に動きを見せています。以下で主なものをご紹介します。

国による住宅ストック活用への取り組み

まずは、空き家対策について。「空家対策特別措置法」が平成27年(2015年)に施行されたことにより、管理が行き届いていない空き家の持ち主に対する自治体による行政指導などの強化が図られました。また、その一方で空き家(空き地を含む)の全国的なデータバンク化も進められています。

中古住宅

ストック住宅のデメリットは、古く現在の暮らしにマッチしていなく、耐震や省エネなどの性能面について分かりづらい点。それらを克服するための制度面の充実が、今急ピッチで整えられようとしている(クリックすると拡大します)

これまでは地方自治体が個別に行っていたものですが、空き家情報が全国一元化されることで、民間の不動産会社などが活用しやすくなり、それにより流通が活性化されることが期待されています。

簡単にいうなら、私たちは空き家がどこにあるかという情報自体に触れる機会がこれまで少なかったのですが、今後はその機会が増えるわけです。そうなれば、以下のような住まいの取得や暮らし方が容易になるはずです。

例えば実家に近く、近居がしやすい場所で手頃な価格のストック住宅を購入するケース。そうすると、子育て世代の方々は親に子どもの面倒を見てもらうこともできるため、暮らしのゆとりを持ちやすくなります。これはストック住宅のメリットの強化にあたります。

デメリットの改善については、住宅ストック循環支援事業という取り組みを、平成28年度(2016年度)に250億円もの予算をつぎ込んで展開を始めています。これは大きく、

・住宅のエコリフォーム

・良質なストック住宅の購入

・エコ住宅への建て替え

について国が費用の一部を補助するもの。

このうち「良質なストック住宅の購入」は、40歳未満を対象に、売買にあたってインスペクションを実施し、既存住宅売買瑕疵保健に加入することが要件とされています。インスペクションに対しては1戸あたり5万円、エコリフォームを同時に行う場合には同じく50万円(耐震改修も行う場合は65万円)が補助されます。

インスペクションというのは、住宅診断や建物検査などのこと。国の講習を受け登録された建築士などの専門家が、住宅の耐震性の状況や不具合の有無などの状況について調査を行い、補修すべき箇所やその時期などを客観的に検査するものです。

首都圏のマンション市場では逆転現象が発生

ハウスメーカーなどのストック住宅では、建築後からの定期的な点検の結果、リフォームなどの実施状況を記録を反映した「住宅履歴(家歴)」というものを残します。ですから、建物がどのような状態かわかりやすく、比較的安心して売買がしやすくなっています。

マンション

首都圏のマンション市場では、2016年に中古の契約戸数が新築の発売戸数を上回る逆転現象が発生。景気や住宅価格の動向など一時的な現象かもしれないが、とはいえ今後の住まいの取得のあり方を巡ってはエポックメーキングな出来事と位置づけられるかもしれない(クリックすると拡大します)

一方、一般的な古い住宅にはそういうものが残っていませんから、私たちが購入しようとする際、どのような状態なのか大変分かりづらいのが実情です。インスペクションというのは、そうした点を補うものです。

この動きと関連するもので、現在住んでいる住宅についてもリフォーム時にインスペクションを実施することで、将来的な価値を維持する取り組み「長期優良住宅化リフォーム推進事業」もあります(平成28年度から実施)

これは、新築住宅で平成21年度(2009年度)から施行されている「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」のストック住宅版で、これもストック住宅のデメリットを補うものと位置づけられます。

ストック住宅の劣化対策、耐震性、省エネ対策、維持管理・更新の容易性、高齢者等対策(共同住宅のみ)、可変性(共同住宅のみ)、三世代同居改修工事に対して補助金が支給されるというものです。

このうち三世代同居改修工事は、親との同居で子育て世代の方々にとってより良い住環境を実現しようという狙いがあります。補助金額は、三世代同居改修工事の場合は最大で1戸あたり150万円 (認定長期優良住宅とする場合は250万円)と大変充実しています。

ところで、あくまで首都圏のマンションの話ですが、2016年は年間に新規発売の戸数(約36000戸)を、中古マンションの新規契約戸数(約37000件)が初めて上回りました。このことは、住宅政策のみならず、社会の潮目が新築住宅からストック住宅に変わりつつあることを象徴していると思われます。





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