管理組合崩壊、マンションの“軍艦島化”が始まる?

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軍艦島

ドラマのロケ地として考えると、非日常、哀愁や時間の流れを実感する場であるが、決して隣に欲しい場所ではないはず(クリックで拡大)

多くの方はご存知だろう。長崎に軍艦島という世界遺産になっている島がある。明治時代から昭和にかけて海底炭鉱によって栄えた島だが、1974年(昭和49年)の閉山に伴い、無人島に。大正5年以降に建てられた日本初の鉄筋コンクリート造の高層アパート群が崩壊しつつも現存しており、数々の映画、ドラマなどにも登場している。

さて、軍艦島は日常生活から離れた海上にあり、歴史的な経緯もあるから世界遺産であり、多くの人が訪れるわけだが、それが我が家の隣にあったらどうだろう。ほとんどの人が迷惑だと思う。だが、今、都心などのマンションでは水面下でマンションの崩壊、軍艦島化が始まっている。

ワンルーム投資に利用された物件

バブル時にワンルーム投資として売り出された新宿近郊、11平米ほどのワンルームの多くは外国人、高齢者、生活保護者に利用されている。ドアに電気、ガスなどを催促する紙が下げられている住戸も多かった(クリックで拡大)

一時期、投資用ワンルームマンションを中心に管理の行き届かない、荒廃した状況が伝えられたことがある。その時、しばしば取り上げられたのは繁華街周辺にある物件で、そもそも、所有者が住むことを想定せずに建てられ、売買されたもの。現在は言葉の通じない人や高齢者、生活保護受給者が居住、建物内外が見るからに荒れた状態になっている例が多く、それはそれで今もあり、問題ではある。だが、それよりも一般の人にとって問題なのは居住するつもりで購入する物件でも同様の問題が起きかねないという点だ。

古いマンションでは住民の高齢化が崩壊の要因

最初に話を聞いたのはマンションの大規模修繕などを手掛ける友人からである。その時彼は築40年、建物外観、共用部だけを見れば手入れの行き届いた、都内の大規模マンションの排水管更新工事を手がけていた。本来、大規模修繕は共用部が対象だが、築年数が30年以上にもなると専有部にも立ち入らざるを得ないケースが出てくる。

そこで立ち入った住戸で彼は衝撃的な光景を目にする。

「300戸ほどのマンションでここ2年弱に3件の孤独死があっただけでなく、単独居住の高齢者が多く、そうした部屋は孤独死のあった部屋よりも荒れた状態。土足のまま、お邪魔すると、人が住んでいるとは思えないほどゴミだらけで、また、住んでいる人も孤独死予備軍といってもいいような、生きる気力を感じない状況でした」。

しかも、管理組合にはそこに住んでいるのが元からの居住者なのか、相続後に賃貸された部屋に住んでいる賃借人なのかも分からない状態である。管理組合で作っている名簿は義務ではなく、中には個人情報だから出したくないという人もいる。名簿を作る段階から不明が多いわけで、さらにその後、そうした人が亡くなり、相続で所有者が変わっても、それを管理組合に届ける義務もない。すると、管理組合では住んでいる人が誰で、所有者が誰なのかが分からない状態が発生してしまう。空室が出ても、その所有者が分からなくなってしまうのである。

さらに同物件では高齢化が進展。介護者同伴や車いす出席なども含め、彼が担当した工事を議題とする臨時総会は有効議決権数ぎりぎり半分を確保、実施に漕ぎつけたが、今後、大規模修繕、建替えなどの決議は難しくなっていくことが想定される。

「認知症が入りつつある人もおり、総会の通知を誰に出したら良いか分からない部屋もある。このままでは、いずれ総会の成立自体が危うくなってくるのではないかと危惧しています」。

実際、他の管理組合関係者からはある日突然、管理費、修繕積立金を払わなくなった住民の話を聞いたことがある。しかも、それを伝えると、自分はちゃんと払ったと主張。おそらく認知症が進行した状態なのだろう、らちが明かないという。こういう人が増えていくと管理組合の機能はどんどん失われていってしまう。

管理組合はマンションの意思決定機関である。そして、総会は定数(マンション標準管理規約では議決権総数の半数以上)が集まらなければ開催できないし、たとえば大規模修繕には内容にもよるが、過半数以上など、一定数の賛成が必要である。

空室増、認知症の住民の増加などによってその管理組合が機能しなくなると、意思は決定できなくなる。なんとかしたいと思う人がいたとしても、現状では打つ手はない。その状況を嫌って出ていく人が出はじめると、荒れるに任せるしかなく、その後に待つものは軍艦島化しかない。

こうした事態を避けるためには中古マンション購入時は管理組合がきちんと機能しているかどうかをきちんと調べておくべきだろう。管理費、修繕積立金の滞納状況などを気にするのはもちろん、活動そのものの把握も大事である。

新築マンションでは外国人所有者増が不安材料

新築マンションには違うタイプの不安がある。あらかじめ、将来の火種が仕込まれているマンションが増えているのである。その火種とは外国人所有者である。

少し前に元々は大手デベロッパー勤務、現在は講演、執筆などを行っている『空き家問題 ~1000万戸の衝撃』(祥伝社新書)著者の牧野知弘氏の講演を聞く機会があった。氏によると都心、湾岸のタワーマンションでは外国人購入者が増加しており、ある物件では中国人所有者が半数にも及んでいるという。となると、管理組合の通知を何語で出すか、総会の公用語を何にするかという問題が出てくる。翻訳が必要だとすると、その費用を誰が出すかという問題もあろう。

それにそもそも、住宅を巡る法律、常識は国によって大きく異なる。たとえば、日本では毎月、修繕積立金を払うという方法に違和感を覚える人は少ないだろうが、修繕積立金は修繕以前に退去しても返還されない。だとしたら、積立は損、それよりも必要な時にまとめて必要額を払えばいいじゃないかと考えるお国柄もある。

よほどに壊れない限り、修繕など不要、荒れていても気にしないという感覚が一般的な国もあれば、建替え、容積率などといった概念がない国もある。普通に日本人だけが住んでいてもなかなかまとまらない協議に法律、常識の違う人が混じるとなれば、さらに大変になることは考えなくても分かる。

それでもまだ、住み続けていれば、交渉の余地はある。だが、もし、購入者が海外に転出、さらにそこから引っ越しとなったら連絡をつけることすらできない可能性が出てくる。とすると、中古マンション同様に管理組合の機能停止の危険もありうる。

しかも、新築の場合は他の購入者について事前に知ることはできない。何か、将来のトラブルを防ぐためにできるとしたら、入居後、管理組合として入居者の情報を常に把握し続けるような仕組みを作るようにするしかないだろう。

最新のマンションの寿命はかつてより長くなっており、そんなに先のことまで心配することはないという意見もある。だが、建替えは別として大規模修繕は10数年後にはやってくる。それを考えると、入居者同士が連携、互いを知るような試みなども必要だろう。





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