賃貸の原状回復での嘘、ホント。画鋲は可でシールは×

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普通に住んでいて付いてしまった汚れなら、費用負担は不要

まず、そもそも原状回復とはどのようなことを意味するのか。国土交通省のガイドラインによると原状回復とは、

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」

となっている。原状回復という言葉そのものには最初の状態に戻すという意があり、それをそのまま解釈すると、借りた状態に戻して退去することになるが、ガイドラインはそうではないと明言している。入居者はそこで生活するために家賃を払っており、生活していれば部屋はどうしても汚れるし、時間が経てば古くもなる。そうした普通に生活していて汚れた部分は入居者の責任ではない、ガイドラインはそう言っているのである。

それを可視化したのが下の図。入居から退去までの間の通常損耗、経年変化は賃料に含まれるため、入居者が負担する必要はない。だが、善管注意義務違反(*)、故意・過失その他による損耗など(下の図ではBの部分)は借りた人が負担しなさいというわけである。

原状回復の概念

原状回復の概念を説明する図。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」より

ただ、面倒なのはどの程度が通常の生活かという点。掃除の頻度にしても毎日する人から、1月に1度、1年に1度、挙句は全くやらないという人までおり、その人にとっての通常、普通が世の中全般から見てそうではないことは十分あり得る。一般に費用負担が発生するのはプロが掃除をしても落ちなくなる程度と考えられるが、汚れてもその都度掃除していればそこまでの状態にはなりにくい。その場で掃除できないこともあろうが、汚れが落ちなくなるまで放置してはいけない。できれば1週間に1度程度は掃除をし、汚れを貯めないようにすることだ。

ちなみに善管注意義務とは民法第400条等にある「善良なる管理者の注意義務」を意味する。これは管理者の職業や社会的・経済的地位に応じて、取引上一般的に要求される程度の注意を言う。民法にはそれ以外に「自己の財産におけると同一の注意をなす義務」という軽い注意義務も定めており、善管注意義務は自分のもの以上(ここ、大事!)に気をつける必要があると解されている。

6年住んだ後の壁の落書きなら、費用負担は発生しない

もうひとつ、原状回復を理解する際にポイントになるのは、時間が経つとモノの価値は減少するという考え方である。これは法人税法などにある減価償却の考え方を当てはめたもので、買った時に1万円だった商品も中古になれば安くなるが、これと同じと考えれば分かりやすい。そして、たいていのモノはそのモノ独自の償却期間が決められている。

たとえば壁紙の償却期間が6年とされており、新築時あるいは張替え時に100%だった価値は6年後には1円(*)になる。6年後の壁紙はほぼ価値ゼロになっているわけで、6年住んで退去する場合には壁紙が子どもの落書きだらけでも、それに対して費用は発生しない。ただし、入居後すぐに落書き、すぐに退去の場合には壁紙の価値は大半が残っており、落書きは故意に当たる。その場合には壁紙の貼替えに対し、費用負担が発生することになる。

画鋲

画鋲を打ったからと言って、それが即費用負担に繋がるわけではないことを理解しよう

よく壁に画鋲ひとつでも打ったら敷金が返ってこないなどと言われるが、これもこのルールを当てはめて考えれば、必ずしも返還されないわけではないことが分かる。もちろん、短期間しか住まなかった、多数の釘などで壁紙の下のボードまで交換するほどになっていたという場合には費用負担が発生する。

それ以外でも壁紙の日焼けやテレビ、冷蔵庫の後ろの電気焼けも通常損耗として扱われるので、気にする必要はない。また、喫煙の場合も6年経っていれば壁紙の価値はほぼゼロのため、壁紙張替えの負担はない。

ただ、ヘビースモーカーの場合、壁紙の負担はなくとも、建具に付着したヤニ落としや消臭、エアコンの内部清掃などに特別な費用が必要になるため、最終的には重い負担になることが多い。そうしたことを避けるためには、窓の近くや換気扇の下で吸う、まめに換気をするなど、煙を室内にこもらせないようにしておこう。

(*)平成19年の税制改正以前は償却期間終了後の残存価値は10%とされていたため、それより以前の契約の場合、今よりも残存価値が高くなることがある

床材は種類によって償却期間が異なる

壁紙同様、クッションフロア、シートフローリング、畳床、カーペットなど、多くの床材は6年償却。畳表は消耗品扱いなので、特約がなければ入居者の負担はない。家具を置いたせいでできる畳やカーペットなどのへこみは通常損耗とされるので、入居者の負担はなくて済むが、シートフローリングを破いたり、濡れた雑誌、タイヤなどのゴム製品を置きっ放しにした結果の色移りなどは入居者負担になる。その他の床材もカビさせるなどすると入居者負担となる可能性がある。これはカビ発生時にきちんと手を打たなかったと判断されるためで、結露によるカビなども同様だ。

床の材質がポイント

素人目には本物の床、シートフローリングなど材質が分からないことがある。下見時に聞いておこう(クリックで拡大)

床材でひとつ、注意したいのは本物の木のフローリング。償却期間が建物同様とされているため、長く住んでも価値がそれほど減少することがなく、傷つけると負担が重くなってしまうのだ。ただし、最近では傷も味わいのうちと、木のフローリングを使用していても、原状回復が不要の物件も出てきているので、契約時に確認するようにしたい。

ところで、壁や床を張り替える場合、毀損しているのが10センチ四方だとしても、そこだけを補修してしまうと不自然になったり、作業自体が難しかったりすることがある。そこで前掲のガイドラインは、補修工事が最低限可能な施工単位を基本とし、壁の場合には一面、畳なら1枚単位、クッションフロアやシートフローリングは部分張替えを想定して平米単位などと補修工事の最小単位を定めている。原状回復に当たって、費用負担について検討する時には補修範囲がどのように算定されているかは必ずチェックし、過大になっていないかを確認しよう。

負担を重くするのはシール、ヘアピンなどなど

安易に取り付けてしまい、退去時になって意外に負担が重くなる結果になるのがシール。具体的な製品としてはドアに貼る「トイレ」などと書かれたシール式のプレートやキッチンで使うタオル掛けのフック、子どもがドアを開けないようにするためのストッパーなど。小さなものでは室内の配線を壁際の幅木に固定するために使うモールなども危険。きれいに剥がせないことが多く、無理に剥がそうとするとドアやキッチンの面材の表面までべりべりに剥がれてしまうなど、交換する部分が大きくなってしまうのだ。

建具類の交換はまとまった金額になることが多く、ドアやキッチンの面材で1枚2~3万円程度になる例もある。最近ではシールではなく、吸盤式、ドアのすき間を利用して吊るすような商品もあるので、できるだけシールタイプの商品は使わないようにしたい。

ジェルシール

安価に買えて、雰囲気が変わると愛用されているらしいが、浴室に貼ってはいけない

若い女性の中にはユニットバス内に、クリスマスの時などにガラスに貼るジェルシールをインテリアとして貼る人が少なくないそうだが、これも色が移ってしまうため、避けるのが賢明。もし、浴室内全てのシートを貼りなおすことになると、それだけで10万円近くになってしまうケースもある。かわいくしたいのは分かるが、跡が残らないものや置くもので工夫してもらいたい。

水回りにはさび、かびも危険物。たとえば錆。洗面所、キッチンシンクなどのステンレス部分にヘアピンや空き缶などを置きっぱなしにしておくと、もらい錆と言われる汚れが付き、これは非常に落ちにくい。全く取れないわけではないが、長期放置した後だと本体を傷つける可能性があるので注意したい。

参考記事はこちら。
やってしまった!?ピンなどのサビ跡汚れの落とし方

浴室のドアに取り付けられたビートと呼ばれるゴムのパッキン状の品がかびてしまうのもよくある話。ここがかびると非常に汚らしく見えるため、交換になることが多いのである。タイル貼の浴室では目地や浴槽などがかびることもあるが、こうしたかび類は換気で防げる。入浴後しばらくは換気扇を回しておく、あるいはシャワー後に軽く拭いておくなどして、かびの発生を防ごう。

浴室では石鹸かすも費用負担に差が出るポイント。体や髪を洗った際に浴室内に飛び散ったままで放置しておくとガラス、鏡などに白く、厚くこびりついてしまって取れにくくなるのである。その結果、浴室内の鏡を交換するとなると、サイズ次第だが数千円から1万円、2万円と費用がかかる。体、髪を洗った後にガラス、鏡部分をきれいな水で洗い流す、盛大にはね散らかさないようにする、たまに掃除するなどして使うようにすれば、そんな羽目にはならないはずだ。

それ以外で費用負担を増大させるのは建具の汚損、破損。交換が必要になるからで、ペットが齧った、蹴とばして穴を開けたなどの場合は覚悟しておきたい。特に無断でペットを飼っていた場合には契約違反でもある。負担も大きくなりがちなので、ペット不可の物件での飼育は絶対にやってはいけない。

同様に残置物にも費用が発生する。特に粗大ゴミは収集日が決まっていて、遅くとも1週間前、2週間前に手配しておかなくては収集してもらえない。引っ越しを決めたら粗大ゴミ処分も同時に進行させよう。

入居時のチェックが敷金返還を左右することも

退去時の敷金返還は入居中の暮らしぶりに左右されるが、もうひとつ、大事なのは入居時の室内チェック。入居時点の部屋の状態が入居者、不動産会社双方で確認できていれば、退去時に揉めることは少なくなる。不動産会社の中には入居後の一定期間内に室内の気になる箇所を入居者がチェック、間取り図、書面などにして保存しておくなどの予防策をとっている例があり、できればそうした仕組みのある会社を利用したいところ。もし、そうした対策が打たれていないのであれば、自分でスマホで撮影、記録しておく、担当者に送っておくなどの手も考えられる。

もちろん、契約時に原状回復についてきちんと説明を受けることも大事。平成10年に国土交通省のガイドラインが登場して以来、すでに18年。かなり浸透はしてきているものの、不動産会社、大家さんによっては過去の認識のまま、入居者に不利な契約を当然としている例もある。きちんとした知識を身に付け、対処しよう。

一度はチェックしておこう。
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について(国土交通省)


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