第16回 ペット禁止の賃貸物件でペットを飼ったらどうなる? – sippo(シッポ)

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 アパートやマンションの賃貸借契約書には、ペット(小鳥や魚などは除く)の飼育を禁止する内容の条項が入っていることが多くあります。

 ペット禁止条項は、貸主が自己の所有財産である建物を管理するにあたり、ペットに居室が汚損されるおそれがあることや、ペットの飼育を巡って住民同士のトラブルのおそれがあるとして、こうした事態を未然に防ぐためなどの理由で定められていると考えられます。賃貸物件については「ペット禁止」がまだまだ主流であり、新築分譲マンション(特に都市部)では一定のルールを設けてペット飼育を「可」とするところがほとんどであることと、大きく異なります。

 ところで、ペット禁止条項に違反して借主がペットを飼っていた場合、契約違反となりますが、きちんと賃料を支払っていても、賃貸借契約を解除されて退去しなければならないでしょうか。

 この点については、衣食住は人の生活の基本であり、ささいな契約違反で賃貸借契約の解除を認めてしまうと借主が住居を失うという重大な影響を受けることから、単に契約違反があるだけでは足りず「貸主と借主の信頼関係が破壊された」といえるだけの事情が必要であるとされています。そうであれば、ペットを飼育していても、近隣住民に迷惑をかけておらず、また、室内や共用部分などの建物を汚損していないならば、契約違反であっても信頼関係が破壊されたとまでは認められないケースが多いのではと考えられます。

 ここで、ペット禁止賃貸物件でのペット飼育と解除の有効性に関する珍しい裁判例(東京地方裁判所2010年2月24日判決)を見つけましたので、紹介します。

 事案の概要は、一軒家の賃貸借契約締結から約1カ月後に、借主がフェネックギツネ(体重1~1・5kg、体長24~41㎝の小型のキツネ)を飼育していたことが判明したため、管理会社を通じて飼育をやめるよう求めたものの、借主が応じなかったため、貸主が契約解除をしたというものです。裁判では、契約解除の有効性が争いとなりました。

 判決文を読む限り、飼育状況について特に問題はなく、また、訴えをおこされた後に借主はキツネをケージに入れて飼うようにしたとのことですので、ひどい飼い方をしていたとか、近隣トラブルをおこしていたわけでもないため、信頼関係の破壊はないという考え方もできそうです。しかしながら、このケースでは、裁判所は貸主の請求を認め、借主に賃貸物件の明け渡しを命じました。

 判決理由を見る限り、入居時にフェネックギツネを飼育するつもりでありながら、それを言わずにペット飼育禁止条項のある賃貸借契約を締結して入居したことを重視しているように思われます。

 また、判決理由からは明らかではありませんが、飼育動物がポピュラーな犬や猫ではなく、ワシントン条約で保護されている希少動物であり、高値(数十万円~100万円前後)で取引されているフェネックギツネであることが影響しているかもしれません。すなわち、飼い主にそれだけ高価なペットを買うだけの金銭があるならば、多少賃料が高くても「ペット可」の物件を探すことが可能であるのに、あえてペット禁止の賃貸物件に入居していることは問題であり、また、裁判所が退去を命じてもそれに伴う諸費用を出せるだろうと思われたのかもしれません。

 いずれにせよ、下級審の裁判例であることや、希少動物であるという特殊な事例であることから、犬や猫を飼育していたケースについて同様に適用されるものではないと考えます。

 契約条項に違反してペットを飼うような借主は「すべて賃貸借契約を解除されて立ち退きを求められて当然である」という考えはバランス感覚を欠くものですが、一方で「家族の一員であるペットとの生活は大事だからいかなるケースでも契約解除できない」という考えもまた一方的であり、相当とはいえません。

 個別具体的なケースにおけるあらゆる事情を検討し、賃貸借契約の解除をしなければならないほどの事情があるか、そこまでする必要はないのかを判断すべき問題といえます。





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